◎デジタル避難訓練

アサヒグループHDがサイバー攻撃を受け、多大な損失が見込まれます。
この件から、対策について考えてみましょう。

🧭 BCPの一環として考える「デジタル避難訓練」

― サイバー攻撃に“強い企業”になるための新常識 ―

自然災害や感染症だけでなく、サイバー攻撃も事業継続を脅かす重大リスクになっています。
システム停止や情報漏えい、業務メールの乗っ取りによる信用失墜……。
これらはもはや「ITの問題」ではなく、経営リスクそのものです。

そこで近年注目されているのが、
**「デジタル避難訓練」**をBCP(事業継続計画)の一環として実施する取り組みです。


🧠 サイバー攻撃も“非常事態”のひとつ

BCPは、災害や事故などで事業が中断した際に、
「どうすれば早期に復旧し、被害を最小限に抑えられるか」を定めた計画です。

この考え方をサイバー攻撃にも当てはめると、
“デジタル災害”に備えるBCPが必要になります。

つまり、

「もし自社の基幹システムが止まったらどうするか?」
「顧客データが暗号化されたら、どの業務を優先的に再開するか?」

こうした判断を事前に訓練しておくことが、デジタル避難訓練の目的です。


🧩 デジタル避難訓練の位置づけ

項目 内容
目的 サイバー攻撃発生時に、事業を止めず・最小限の損害で対応するための実践訓練
関連するBCP要素 リスク分析/復旧体制の整備/代替手段の確保/情報伝達の手順
対象範囲 経営層・システム部門・広報・総務・現場担当など全社員

サイバー攻撃は「システム障害」だけでなく、顧客対応・報告・法的義務・ブランド信頼など広範囲に影響します。
そのため、BCP全体の中で横断的に組み込むことが求められます。


⚙️ 訓練のステップ

1️⃣ 想定シナリオを作る

たとえば次のようなケースを設定します:

  • 社内サーバーがランサムウェアに感染

  • 社員のメールアカウントが乗っ取られ、顧客に不審メールを送信

  • クラウドサービス障害で業務が停止

このように「起こりうる」事態を想定し、対応プロセスを検証します。

2️⃣ 初動対応と報告ルートの確認

CSIRT(インシデント対応チーム)や情報システム部門、経営陣への連絡フローを確認。
同時に、被害拡大を防ぐための初動対応(ネットワーク遮断、ログ取得など)を練習します。

3️⃣ 社内外への情報共有訓練

顧客・取引先・メディアへの公表対応、個人情報保護委員会への報告など、
広報・法務の連携訓練も欠かせません。

4️⃣ 復旧と代替手段の確認

バックアップからの復旧、代替システムへの切替手順を確認。
「業務を止めない仕組み」がBCPの核心です。

5️⃣ 事後レビュー(インシデントレビュー)

訓練の成果と課題を整理し、

  • ルール・マニュアルの更新

  • 再発防止策の策定

  • 再訓練の計画

を実施します。


🧱 BCPとしてのメリット

  1. 経営リスクの可視化
     実際に訓練を行うことで、どこに弱点があるかを明確にできます。

  2. 組織横断の危機対応力向上
     IT部門だけでなく、経営層・広報・総務が一体となった“全社防御体制”を形成できます。

  3. 社内意識の醸成
     サイバー攻撃を「誰かの問題」ではなく、「全員のリスク」として共有できます。


🌐 まとめ:サイバー攻撃も“BCPで備える時代”

自然災害への備えが当たり前になったように、
これからはサイバー攻撃にもBCPで備えることが企業の常識になります。

「デジタル避難訓練」は、単なるIT訓練ではなく、
経営のレジリエンス(回復力)を高める戦略的施策です。


🔐 サイバー攻撃は防ぎきれなくても、被害は減らせる。
その鍵を握るのが、BCPの中で行う“デジタル避難訓練”です。

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