◎ソフトウェアの「創作性」とは?

著作権法では、著作物であるためには「創作性」が求められていますが、著作物であるソフトウエアの創作性とは何でしょうか?
著作権法における「創作性」とは、作者の個性が何らかの形で表れていることをいいます。

ソフトウェア(プログラム)の場合も同じですが、その性質上、少し具体的に考える必要があります。


1. 著作権法上の基本原則

日本の著作権法では、

「思想又は感情を創作的に表現したもの」

が著作物とされています(著作権法2条1項1号)。

プログラムも「プログラムの著作物」として保護対象です(同法10条1項9号)。

ここで重要なのが「創作的に表現したもの」という点です。


2. ソフトウェアにおける「創作性」とは?

ソフトウェアの創作性とは、
プログラムの具体的な表現方法に、作者の個性が表れていることです。

具体的には:

✅ 創作性が認められやすい部分

  • アルゴリズムの具体的な実装方法

  • 処理手順の構成の仕方

  • モジュール分割の方法

  • 変数名や関数構造の設計

  • 命令の並び方

  • ソースコードの具体的記述

同じ機能を実現するにも、書き方は無数にあります。
その「選択の幅」がある部分に個性が出れば創作性が認められます。


❌ 創作性が認められない部分

一方で、次のようなものは保護されません。

  • アイデアそのもの

  • アルゴリズムの抽象的な考え方

  • 数学的理論

  • 単なる事実やデータ

  • 仕様に従う以外に書きようがない表現

  • ごく短い・ありふれたコード

これは著作権法の「アイデアと表現の二分論」によるものです。


3. 重要なポイント:機能は保護されない

著作権法は、

「機能」や「動作」そのものは保護しない
「その具体的な表現」だけを保護する

という立場です。

例えば:

  • ✖「この計算ロジックを使うこと」→保護されない

  • 〇「そのロジックを特定のコードで書いた表現」→保護される


4. 創作性が否定される典型例

裁判例では、次のような場合に創作性が否定されています。

  • 他に書きようがない場合(表現の選択肢がない)

  • 極めて単純なコード

  • マニュアル通りに機械的に記述しただけのもの

これを「表現の不可避性(マージ理論)」と呼びます。
機能と表現がほぼ一体化している場合は保護が弱くなります。


5. まとめ

ソフトウェアの創作性とは:

機能を実現するための具体的なコード表現に、作者の個性が現れていること

であり、

  • アイデアは保護されない

  • 表現が保護される

  • 選択の幅がある部分に創作性が宿る

というのが基本構造です。


では、もう少し発展させて考えてみましょう。

  • 「APIの著作権はどうなるのか?」

  • 「生成AIが書いたコードに創作性はあるか?」

  • 「リファクタリングで創作性は変わるか?


① APIの著作権はどうなるか?

■ 結論(日本法の一般的理解)

  • APIの「アイデア・機能・仕様」そのものは保護されない

  • しかし 具体的な記述方法(ソースコードや詳細な表現)には著作権が及ぶ可能性がある


1. APIとは何か?

APIは基本的に:

  • 関数名

  • 引数

  • 戻り値

  • 呼び出し規約

  • 構造定義

などの「インターフェース仕様」です。

これは本質的に「機能の設計図」です。


2. 問題になるポイント

● 関数名や構造名に創作性はあるか?

通常は

  • print()

  • open()

  • getUserName()

のような名称は
ありふれた機能的名称であり創作性は弱いと考えられます。


● API全体の体系に創作性はあるか?

ここが難しい点です。

  • パッケージ構成

  • 階層構造

  • クラス設計

  • 分類方法

などに設計上の個性が表れている場合、著作物性が認められる余地があります。


3. 有名な海外事例

Google v. Oracle(米国)

Java APIの再利用が争われました。

米最高裁は最終的に「フェアユース」と判断しましたが、
APIの著作物性については完全に否定していません。


4. 日本法での考え方

日本では一般に:

  • 機能的・必然的な部分 → 保護されにくい

  • 設計思想が反映された体系的構成 → 保護され得る

と整理されます。


② 生成AIが書いたコードに創作性はあるか?

これは現在最もホットな論点です。


1. 日本法の大原則

著作物とは

「思想又は感情を創作的に表現したもの」

です。

ここから導かれる重要な前提:

👉 創作者は「人」である必要がある


2. 完全自動生成の場合

人間が創作的関与をしていない場合:

  • AI単独生成物 → 著作物性は否定される可能性が高い

文化庁の整理もこの方向です。


3. 人が関与した場合

次のような場合は著作物性が認められ得ます:

  • 詳細なプロンプト設計

  • 生成結果の選択・修正

  • 大幅な編集

つまり、

AIは「道具」に過ぎず、最終的な創作的判断を人が行ったか

がポイントです。


4. 実務的な整理

状況 著作物性
ボタン一発で自動生成 否定的
人が細かく設計・編集 肯定され得る
出力をそのまま利用 グレー

③ リファクタリングで創作性は変わるか?

これは非常に面白い論点です。


1. リファクタリングとは?

  • 機能を変えず

  • 内部構造を改善する

行為です。


2. 創作性はどう評価されるか?

● 単なる機械的変換

  • 変数名変更

  • 自動整形

  • IDEによる変換

→ 創作性はほぼ増えない


● 設計思想を変えるレベルの変更

  • アーキテクチャ変更

  • モジュール分割の再設計

  • 抽象化の導入

  • デザインパターン適用

→ 新たな創作性が加わる可能性あり


3. 二次的著作物の問題

大幅な改変をすれば:

  • 原著作物を基礎とする

  • しかし新たな創作性も加わる

→ 「二次的著作物」になる可能性があります

ただし:

👉 原著作権者の許諾が必要


④ ソフトウェア創作性の核心

ソフトウェアの創作性は結局:

「設計上の選択の幅」がどれだけあるか

に帰着します。

選択の余地が広い部分には創作性が生まれやすく、
必然的な部分には生まれにくい。


まとめ(全体像)

論点 結論の方向性
API 機能は保護されないが構造に創作性があれば保護可能
生成AI 人の創作的関与があれば保護可能
リファクタリング 実質的設計変更なら創作性が加わる可能性
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