「いい会社」と「選ばれる会社」は何が違うのか
2026年9月22日のWBS(ワールドビジネスサテライト)で、「選ばれ続ける秘訣は?企業のブランド力」というテーマが取り上げられました。
「ブランド」と聞くと、有名企業の商品名やロゴ、高級ブランドなどを思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、企業にとってのブランドは、単に「名前が知られている」ということではありません。
「あの会社なら安心できる」
「この会社の商品を選びたい」
「何かあったら、あの会社に相談したい」
このように、お客様や取引先の頭の中に積み重なっていく「信頼」や「期待」も企業ブランドの重要な要素です。
そしてこれは、大企業だけの話ではありません。
むしろ中小企業や士業、地域に根ざした事業者ほど、「誰から買うか」「誰に相談するか」が重要になるため、企業ブランド力が経営に大きな影響を与えると考えられます。
企業ブランド力ランキング1位はトヨタ自動車
WBSで取り上げられた背景には、日経リサーチの「ブランド戦略サーベイ1000」があります。
この調査は、1000社を対象に、約16万人の生活者とビジネスパーソンの評価から企業ブランドの価値を測定したものです。
2026年の総合ランキング上位は、
1位 トヨタ自動車
2位 任天堂
3位 ユニクロ
4位 カルビー
5位 キユーピー
6位 日清食品
7位 アップル
8位 味の素
9位 ソニーグループ
10位 良品計画(無印良品)
となっています。
興味深いのは、単に規模の大きな企業ばかりが並んでいるわけではないことです。
食品、自動車、ゲーム、小売、ITなど、業種もさまざまです。
では、これらの会社に共通しているものは何でしょうか。
そもそも「企業ブランド力」とは?
日経リサーチでは、企業ブランドを単なる知名度ではなく、企業認知の「広さ」、企業との関係性・エンゲージメントの「深さ」、さらに商品やサービスの選択につながる「ブランド貢献」などから捉えています。
つまり、
「知っている会社」から「理解している会社」へ、そして「選びたい会社」へ。
この変化を生み出す力が、企業ブランド力だと考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば、会社名を知っていても「何をしている会社なのか分からない」という状態では、ブランド力は十分とはいえません。
反対に、会社の考え方や特徴を理解し、
「この会社らしい」
「この会社なら信頼できそうだ」
「この会社の商品・サービスを使いたい」
と思ってもらえるようになれば、ブランドは経営上の「資産」になっていきます。
選ばれる企業になるための3つのポイント
今回のテーマから、中小企業にも応用しやすいポイントを整理すると、私は次の3つが重要だと考えます。
1.「何をしている会社か」を理解してもらう
最初に必要なのは、会社の事業を知ってもらうことです。
意外に難しいのがこれです。
会社側は毎日その仕事をしていますから、「自分たちが何をしている会社なのか」は当然伝わっていると思いがちです。
しかし、お客様から見ると、
「結局、何を頼めるの?」
「他社と何が違うの?」
「私の場合も相談できるの?」
ということが分からないケースがあります。
ホームページでも、専門用語を並べるだけでは十分ではありません。
「誰の、どんな困りごとを、どのように解決する会社なのか」
これを分かりやすく伝えることが、企業ブランドづくりの第一歩です。
2.お客様から「愛着」や「信頼」を持ってもらう
商品やサービスの品質が高いことはもちろん重要です。
しかし、それだけでは価格競争になってしまう可能性があります。
「同じようなサービスなら安い方にしよう」
となってしまうからです。
そこで重要になるのが、企業に対する愛着や信頼です。
たとえば、
「説明が丁寧だった」
「質問にきちんと答えてくれた」
「困ったときに相談に乗ってくれた」
「売った後も対応してくれた」
こうした一つひとつの経験が、その会社への信頼をつくります。
ブランドは広告だけでつくられるものではありません。
日々のお客様との接点そのものが、ブランドをつくっているのです。
これは中小企業にとって、とても重要なポイントではないでしょうか。
3.「その会社らしさ」を明確にする
もう一つ重要なのが「個性」です。
競合他社とまったく同じことを言っていては、お客様から見れば違いが分かりません。
「価格が安い」
「迅速に対応します」
「親切丁寧です」
もちろん、どれも大切です。
しかし、多くの会社が同じことを言っています。
そこで考えたいのが、
「自社だからこそ提供できる価値は何か」
ということです。
長年培った技術かもしれません。
地域とのつながりかもしれません。
専門分野への深い知識かもしれません。
あるいは「とにかく話をよく聞く」という姿勢そのものがブランドになることもあります。
他社と無理に違うことをする必要はありません。
自分たちが大切にしてきたことを掘り下げていくと、そこに「その会社らしさ」が見えてきます。
中小企業こそ「企業ブランド力」が重要
「ブランド戦略なんて大企業がするものだ」と思われるかもしれません。
私はむしろ、中小企業ほどブランドを意識する意味があると思います。
中小企業は大企業のように大量の広告を出すことは難しいでしょう。
だからこそ、
「○○なら、あの会社」
「困ったら、あの人に相談しよう」
と思ってもらうことが大切です。
たとえば地域の会社なら、知名度を全国に広げる必要はありません。
自社のお客様になってほしい人たちから、
「知っている → 理解している → 信頼している → 選びたい」
という関係をつくることができれば、それは十分に強いブランドです。
法務も企業ブランドを支えている
ここで少し違う角度から企業ブランドを考えてみましょう。
私は、企業ブランドと「法務」は決して別々のものではないと考えています。
たとえば、
契約をきちんと守る。
著作権を尊重する。
取引条件を明確にする。
取引先に無理な要求をしない。
個人情報を適切に扱う。
トラブルが起きたときに誠実に対応する。
これらは一見すると「法務」の話です。
しかし、お客様や取引先から見れば、
「この会社は信頼できるか」
というブランド評価そのものでもあります。
企業ブランドは、広告やデザインだけでつくられるものではありません。
契約、接客、商品、Webサイト、SNS、社員の対応など、会社の行動すべての積み重ねによって形成されます。
言い換えれば、コンプライアンスや企業法務もブランドづくりの一部なのです。
AI時代には「信頼」がさらに重要になる
生成AIの普及によって、文章、画像、広告、Webサイトなどを以前より簡単に作れるようになりました。
これは中小企業にとって大きなチャンスです。
一方で、情報発信そのものが簡単になればなるほど、
「誰が言っているのか」
「その会社を信用できるのか」
という点が、これまで以上に重要になる可能性があります。
AIを使えば情報は発信できます。
しかし、長年の仕事によって積み上げられた信頼まで、一瞬でつくれるわけではありません。
だからこそAI時代のブランド戦略では、デジタル技術を活用しながら、企業としての「人間らしさ」や「誠実さ」をどう伝えるかが重要になるでしょう。
今日からできる「ブランド力チェック」
最後に、自社のブランド力を簡単に確認してみましょう。
次の質問に答えてみてください。
- お客様は「自社が何をしている会社か」を一言で説明できるでしょうか?
- 「なぜ他社ではなく自社を選ぶのか」を説明できるでしょうか?
- お客様が自社に感じている「信頼」や「愛着」は何でしょうか?
- 自社らしさをホームページで伝えられているでしょうか?
- 契約、接客、情報発信などに一貫した姿勢があるでしょうか?
答えに迷う項目があれば、そこにブランド力を高めるヒントがあります。
ブランドとは「選ばれ続ける理由」
企業ブランドというと、ロゴや広告など「見せ方」に目が向きがちです。
しかし、本当に大切なのは、
「なぜ、この会社が選ばれるのか」
という理由をつくることではないでしょうか。
事業を理解してもらう。
信頼や愛着を積み重ねる。
そして、自社ならではの個性を明確にする。
これらは大企業だけにできることではありません。
むしろ、お客様との距離が近い中小企業や地域の事業者だからこそ、一人ひとりとの関係を通じて強いブランドをつくることができます。
ブランドは、一日で完成するものではありません。
日々の仕事、約束を守ること、丁寧に説明すること、そして相手の話をきちんと聞くこと。
そんな当たり前の積み重ねが、
「この会社なら安心だ」
という評価につながります。
企業ブランド力とは、言い換えれば「信頼を積み重ね、選ばれ続ける力」とも言えます。
参考
・テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」2026年9月22日放送
・日経リサーチ「ブランド戦略サーベイ1000(2026年版)」
