行政書士が生成AIと著作権をわかりやすく解説
ChatGPTなどの生成AIを使って文章を書く人が増えています。
ブログの記事を書く。
商品の説明文を作る。
企画書のたたき台を作る。
メールの文章を考えてもらう。
私自身も、AIは仕事を助けてくれる非常に便利な道具だと思っています。
ところで、ここで一つ疑問が出てきます。
「ChatGPTが作った文章に著作権はあるのでしょうか?」
さらに考えてみると、
「AIが作った文章を自分のブログに掲載してもいいの?」
「自分が指示して作らせたのだから、自分の著作物になるの?」
「AIの文章が誰かの文章に似ていたらどうなるの?」
いろいろな疑問が出てきます。
今回は、著作権を扱う行政書士の立場から、生成AIと著作権の基本的な考え方を、できるだけわかりやすく考えてみたいと思います。
そもそも「著作物」とは何だろう?
まず、著作権の基本から確認してみましょう。
著作権法では、著作物について、
「思想又は感情を創作的に表現したもの」
という考え方を基本にしています。
ここで重要なのが、
「創作的に表現した」
という部分です。
単なる事実やデータ、アイデアそのものなどは、当然に著作物になるわけではありません。
では、AIが自動的に作った文章はどうなるのでしょうか。
AIが自動的に作っただけなら?
たとえばChatGPTに、
「春をテーマにブログを書いて」
とだけ入力したとします。
するとAIが文章を作ってくれました。
人間はほとんど何も手を加えていません。
このように、簡単な指示を与えただけでAIが自律的に生成したものについて、文化庁は、著作物には該当しないと考えられると説明しています。
なぜでしょうか。
著作権は、基本的に人間による創作的な表現を保護する制度だからです。
AI自身が、
「こんな文章を書きたい」
と創作意図を持っているわけではありません。
また、AI自体が著作者になるわけでもありません。
ですから、
「ChatGPTが作った文章だから、自動的に自分の著作物になる」
とは限らないのです。
ここは、とても重要なポイントです。
では、AIを使ったら著作権は認められない?
ここで、
「それならAIを使って文章を書いたら、著作権は認められないの?」
と思うかもしれません。
そう単純ではありません。
文化庁の考え方では、人間がAIを**「道具」として使用して創作した**と認められる場合には、著作物に該当し、AI利用者が著作者になることが考えられます。
ポイントになるのが、
「創作意図」と「創作的寄与」
です。
少し難しい言葉ですね。
簡単に言えば、
「自分がこういうものを作りたいという意思を持ち、その表現を作るために人間が創作的に関わったか」
ということです。
プロンプトをたくさん書けば著作物になる?
では、AIへの指示、いわゆる「プロンプト」を長く書けば、自分の著作物になるのでしょうか。
これも、
「長ければ大丈夫」
とは言えません。
たとえば、
「2000文字で書いてください」
「見出しを5つ作ってください」
「初心者向けにしてください」
という指示をたくさん追加したとしても、それだけで人間による創作的な表現への関与が認められるとは限りません。
一方、
「この経験を中心に書きたい」
「ここでは自分が実際に感じたことを伝えたい」
「この部分はこのような表現に変更したい」
と考えながらAIと何度もやり取りし、生成された文章を選び、修正し、自分の表現として仕上げていく。
こうなると、人間の創作への関わり方は変わってきます。
つまり大切なのは、
「AIに何文字入力したか」ではなく、「人間が創作にどう関わったか」
ということなのです。
たとえば、このブログはどうなの?
せっかくなので、身近な例で考えてみましょう。
私がAIに、
「生成AIと著作権についてブログを書いて」
とだけ指示して、そのまま出来上がった文章を掲載したとします。
これはAIへの依存度がかなり高い使い方です。
一方、
「行政書士として著作権を扱ってきた経験を入れよう」
「読者には難しい法律用語を使わず説明しよう」
「この結論では誤解されそうなので書き直そう」
「ここには自分の考えを追加しよう」
「AIが作った文章を並べ替えて、自分なりの構成にしよう」
といった作業を繰り返したらどうでしょう。
AIは使っていますが、人間も創作に関わっています。
AIを、
「代わりに全部作ってくれる人」
として使うのか、
「自分の表現を作るための道具」
として使うのか。
この違いは、AI時代の著作権を考えるうえで重要になってくるでしょう。
AI生成物の著作権と、他人の著作権侵害は別問題
ここで、ぜひ知っておきたいポイントがあります。
それは、
「AIが作ったものに著作権があるか」という問題と、「そのAI生成物が他人の著作権を侵害していないか」という問題は別
ということです。
たとえば、自分のAI生成文章について著作物性が認められないとしても、
「だったら何を書いても自由」
という話にはなりません。
AIが生成した文章が、既存の著作物の創作的な表現と同一・類似している場合などには、別途、著作権侵害が問題になる可能性があります。
したがって、
「AIが作ったから著作権は関係ない」
と考えるのは危険です。
「自分の権利が発生するのか」という問題と、
「他人の権利を侵害していないか」という問題。
この二つを分けて考える必要があります。
「AIが作ったから安心」ではない
AIを使っていると、こんな感覚になりやすいかもしれません。
「自分はコピーしていない」
「AIが作ったのだから大丈夫だろう」
しかし、最終的にその文章や画像を公開したり、仕事で利用したりするのは人間です。
特に会社のホームページ、広告、商品、出版物などでAI生成物を利用する場合には、
「他人の作品と似ていないか」
「既存のキャラクターなどが含まれていないか」
「利用しているAIサービスの規約上、問題はないか」
などを確認したほうがよいでしょう。
AIを使えば著作権を考えなくてよくなるのではありません。
むしろ、
AIを使うからこそ、著作権について考える機会が増える
と私は思っています。
行政書士がおすすめするAI文章作成の5つの習慣
では、ChatGPTなどを使って文章を作るとき、どんなことを意識すればよいのでしょうか。
私は、次の5つをおすすめします。
1.AIに丸投げしない
まず自分で、
「何を伝えたいのか」
を考えましょう。
2.自分の経験や考えを入れる
AIにはないものがあります。
それは、あなた自身の経験です。
実際に経験したこと、感じたこと、仕事で気づいたこと。
これらを加えるだけで文章は大きく変わります。
3.生成された文章を自分で編集する
AIが出した文章をそのまま使うのではなく、
削る。
足す。
並べ替える。
言い換える。
こうした作業を行います。
4.重要な文章は類似性なども確認する
商用利用など重要な場面では、既存の著作物との関係についても意識しましょう。
5.AIとのやり取りや編集過程を残しておく
どんなプロンプトを入力したのか。
どのような修正をしたのか。
どの部分を自分で書いたのか。
こうした記録を残しておくことも、AIをどのように利用して創作したのかを後から確認するうえで役立つ場合があります。
「AIを使ったか」より「人間が何をしたか」
生成AIと著作権の話をすると、
「AIを使った作品には著作権がありますか?」
という質問になりがちです。
しかし私は、もう少し違う質問をしたほうがわかりやすいと思っています。
それは、
「その作品を作るために、人間は何をしたのですか?」
という質問です。
AIに一言だけ入力して、そのまま出力したのか。
何度も指示を変えたのか。
生成されたものを選択したのか。
文章を大幅に書き直したのか。
自分の経験や考えを加えたのか。
こうした創作過程を見ていく。
AI時代の著作権を考えるうえでは、この視点が重要なのではないでしょうか。
AI時代だからこそ「自分の言葉」の価値が高くなる
ここからは、少し法律を離れて考えてみたいと思います。
生成AIを使えば、きれいな文章を誰でも簡単に作れるようになりました。
これは素晴らしいことです。
しかし、AIがきれいな文章を大量に作れるようになるほど、
「その人にしか書けないこと」
の価値は、むしろ高くなるのではないでしょうか。
仕事で経験した失敗。
お客様から教えてもらったこと。
長年働いて気づいたこと。
自分なりに考えてきたこと。
こうしたものは、AIが勝手に作ることはできません。
AIに文章を書いてもらう。
そこに自分の経験を加える。
さらにAIと対話しながら考えを深める。
最後は自分の言葉として仕上げる。
私は、そんなAIとの付き合い方が面白いと思っています。
AIは「著作者」ではなく「創作のパートナー」へ
ChatGPTなどの生成AIで作った文章について、
「AIを使った=著作権がある」
あるいは、
「AIを使った=著作権がない」
と単純に決めることはできません。
AIが自律的に生成したものなのか。
人間が創作意図を持っていたのか。
人間による創作的な寄与があったのか。
具体的な事情によって考える必要があります。
そしてもう一つ忘れてはいけないのが、自分のAI生成物に著作権が認められるかという問題と、他人の著作権を侵害していないかという問題は別だということです。
生成AIと著作権については、今後も具体的な事例の蓄積や技術の進歩などによって、議論が深まっていくでしょう。
だからこそ、
「AIが作ったから大丈夫」
で終わらせず、
「人間はどこに創作的に関わったのか?」
「他人の権利を侵害していないか?」
と考える習慣を持つことが大切です。
AIに全部任せるのでもなく、AIを怖がって使わないのでもない。
AIを道具として使い、自分で考え、自分の経験を加え、自分の表現にしていく。
AI時代だからこそ、「自分の言葉」を大切にしたい。
著作権を長く見てきた行政書士として、私はそう思います。
【参考】
文化庁「AIと著作権について」
文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」
