◎AIが出した法律情報、本当に正しい?

実際に検証してみた

最近、ChatGPTをはじめとする生成AIに質問することが、ごく普通になってきました。

仕事のアイデアを考えてもらったり、文章を作ってもらったり、知らない言葉を説明してもらったり。

私自身、AIはとても便利な道具だと感じています。

では、法律についてAIに質問した場合はどうでしょうか?

「契約を途中で解除できますか?」

「インターネットの画像を自分のブログに掲載しても大丈夫ですか?」

「AIが作った文章に著作権はありますか?」

こうした質問にも、生成AIはあっという間に答えてくれます。

しかも、かなり詳しい。

読んでいると、

「なるほど。そういう法律になっているのか」

と思ってしまうこともあります。

しかし、本当にそのまま信じてよいのでしょうか。

今回は、法律実務に携わる行政書士の立場から、AIが出した法律情報をどう受け止めればよいのか、実際の質問例を使いながら検証してみたいと思います。

まずAIに法律問題を質問してみよう

今回、AIにこんな質問をしてみたとします。

「インターネットで見つけた写真を、自分の会社のホームページに掲載してもいいですか?」

皆さんなら、どう答えるでしょうか。

生成AIに質問すると、おそらく次のような趣旨の回答をするでしょう。

「インターネット上の写真にも著作権があるため、原則として著作権者の許可なくホームページへ掲載することはできません。ただし、著作権法上の例外に該当する場合などは、許可なく利用できる可能性があります。」

さて、この回答。

正しいでしょうか?

大筋では、考える方向としてそれほど不自然ではありません。

しかし行政書士としては、

「では、この回答だけを読んで写真を使ってよいか判断できますか?」

と聞きたくなります。

答えは簡単ではありません。

ここに、AIで法律情報を調べるときの重要なポイントがあります。

検証①「原則として正しい」と「あなたの場合も正しい」は違う

AIは一般論を説明することを得意としています。

しかし、法律問題では、

一般論として正しいことと、目の前の具体的なケースにそのまま当てはまることは別問題です。

先ほどの写真の例なら、少なくとも、

・その写真を誰が撮影したのか
・どこから入手したのか
・利用規約はどうなっているのか
・どのような目的で掲載するのか
・写真をどのような形で使用するのか
・権利者から利用許諾を受けているのか

といった事情を確認する必要があります。

つまり、

「ネットの写真には著作権があります」

という知識だけでは、具体的な判断には足りないのです。

法律では、「その人が置かれている具体的な状況」がとても重要です。

ここは、AIを使うときにぜひ覚えておきたいところです。

検証② AIが法律や条文を示したら、それで安心?

それでは、もう少し突っ込んでAIに聞いてみましょう。

「その回答の法律上の根拠を教えてください」

AIは著作権法の条文などを挙げて説明してくれるかもしれません。

ここで、

「法律まで示してくれたから間違いない」

と思いたくなります。

しかし、もう一段確認してみましょう。

その条文は本当に存在するでしょうか?

さらに、

現在もその内容でしょうか?

そして、

その条文の解釈は正しいでしょうか?

生成AIは、もっともらしい情報を生成する一方で、事実と異なる内容を回答する場合があります。

存在しない判例や資料などを、それらしく示してしまうこともあります。

いわゆる「ハルシネーション」です。

法律問題では、この「それらしさ」が少々厄介です。

AIの文章は流暢なので、間違っていても気づきにくいからです。

したがって、AIが法律名や条文、行政機関の資料などを示した場合には、一次情報を自分で確認する習慣をつけることが重要です。

検証③「最新情報ですか?」と聞いてみる

法律を調べるうえで、もう一つ重要なのが情報の鮮度です。

法律や行政制度は改正されます。

ガイドラインや行政機関の見解などが更新されることもあります。

そこでAIに、

「この情報はいつの法律に基づいていますか?」

と聞いてみましょう。

さらに、

「現在の法令を確認するには、どの一次情報を見ればよいですか?」

と質問してみるのもよいでしょう。

そして重要な案件については、AIの回答だけで終わらせず、実際に公的な情報源を確認します。

AIが教えてくれたことを「答え」と考えるのではなく、調査を始めるための入口と考える。

私はこの使い方が大切だと思っています。

検証④ AIにあえて「反対意見」を聞いてみる

私は、生成AIの面白い使い方の一つがこれだと思っています。

最初の回答を読んだら、今度はAIにこう聞いてみます。

「今の回答が間違っている可能性を指摘してください」

あるいは、

「別の法律解釈が考えられるとしたら、どのようなものがありますか?」

するとAIが、最初の回答とは違った角度から問題点を示してくれることがあります。

これは非常に興味深い使い方です。

ただし、ここでも注意が必要です。

最初の回答もAI、反対意見を出したのもAIです。

つまり、AIの回答を別のAI回答だけで「検証完了」にしてはいけません。

最後は根拠となる法令や公的資料などを確認する必要があります。

では、AIに法律を聞いてはいけないのか?

ここまで読むと、

「それなら法律についてAIに聞かないほうがいいのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

私はそうは思いません。

むしろ、AIは法律を理解するための便利な補助ツールになり得ると考えています。

たとえば難しい法律用語について、

「中学生にもわかるように説明してください」

と聞く。

長い文章について、

「重要な論点を3つに整理してください」

と聞く。

さらに、

「この問題を検討するためには、どのような情報を確認する必要がありますか?」

と聞いてみる。

こうした使い方なら、法律問題を整理するための良いスタート地点になります。

つまり重要なのは、

AIを使うか、使わないかではありません。

AIをどう使うかです。

行政書士が考える「AI法律情報」の確認5ステップ

私は、AIから法律に関する回答を得たときには、次のような順番で考えるとよいと思っています。

① AIに質問する

まずAIを使って問題の全体像をつかみます。

② 「根拠は?」と聞く

法令、条文、公的資料など、回答の根拠を確認します。

③ 「反対の考え方は?」と聞く

別の解釈や例外がないかを検討します。

④ 一次情報を確認する

AIが示した法令や資料が本当に存在するか、現在も有効なのか、自分で確認します。

⑤ 重要な判断は専門家に相談する

契約、許認可、著作権など、事業や権利に大きな影響を与える問題については、AIだけで最終判断をしないことが大切です。

私はこの5段階を、

「AIに聞く → 疑う → 調べる → 確かめる → 判断する」

と考えています。

AI時代に専門職へ相談する意味も変わる

これまで専門職に相談するときは、

「わからないから全部教えてください」

という形が多かったかもしれません。

しかしAIが普及すると、

「AIでここまで調べました。でも、この部分がわかりません」

という相談が増えていくでしょう。

これは専門職にとっても悪いことではないと思います。

相談する人が事前に問題の概要を理解していれば、より具体的な話ができます。

一方で専門職には、単に「知識を持っている」というだけではなく、

相談者の話を聞き、事情を整理し、AIが示した情報も含めて確認し、その人に必要な情報をわかりやすく伝えること

が、これまで以上に求められるでしょう。

AIが発達するほど、「聞く」という人間の力が重要になる。

私はそのように思います。

AIに「正解」を求めるより、「良い質問」をしてみよう

生成AIを使っていると、

「正しい答えを教えてほしい」

と思いがちです。

しかし法律問題では、一問一答で簡単に答えられないことがたくさんあります。

そこで発想を少し変えてみましょう。

「これは合法ですか?」

だけではなく、

「この問題を判断するには、何を確認すればよいですか?」

と聞いてみる。

「この契約書は大丈夫ですか?」

だけではなく、

「この契約書でトラブルになりそうな点を挙げてください」

と聞いてみる。

そして最後に、

「あなたの回答が間違っている可能性も教えてください」

と聞いてみる。

AIに正解を決めてもらうのではなく、自分が考えるための材料を出してもらう。

この発想を持つだけでも、AIとの付き合い方はかなり変わると思います。

AIの答えを「答え」で終わらせない

今回、AIが出す法律情報について、行政書士の視点から考えてみました。

生成AIは便利です。

法律の難しい言葉をわかりやすくしたり、問題点を整理したり、調査の手がかりを見つけたりする場面では、大いに役立つでしょう。

しかし、

AIが答えた。だから正しい。

とは限りません。

法律に関する情報なら、

根拠は何か。
情報は最新か。
例外はないか。
自分の場合にも当てはまるのか。

を確認する必要があります。

AI時代に必要なのは、AIを遠ざけることではなく、AIを使いながら、AIを疑える力を持つことではないでしょうか。

そして、私はもう一つ大切なことがあると思っています。

AIに聞いたあと、

「本当にそうなの?」

と、もう一度考えてみることです。

この小さな疑問が、人間の「考える力」を鍛えてくれるのかもしれません。

AIに答えを任せるのではなく、AIと一緒に考える。

行政書士として、私自身もそんなAIとの付き合い方を続けていきたいと思います。