行政書士と考える生成AI時代の情報リテラシー
ChatGPTをはじめとする生成AIが、私たちの仕事や暮らしの中に急速に入ってきました。
文章を書いてもらう。
アイデアを出してもらう。
わからないことを質問する。
長い資料を整理してもらう。
使ってみると、本当に便利です。
私自身もデジタル技術やAIには大きな可能性があると考えています。
一方で、AIを使う機会が増えれば増えるほど、大切になる力があります。
それが、
「AIの回答をそのまま信じず、自分で考える力」
です。
今回はこれを「AIへの批判力」と呼んでみたいと思います。
「批判」というと、相手の欠点を探したり、否定したりするイメージがあるかもしれません。
しかし、ここでいう批判力はそういう意味ではありません。
「それは本当だろうか?」
「根拠は何だろう?」
「別の見方はないだろうか?」
と、一度立ち止まって考える力です。
生成AIが身近になった今、この力はますます重要になっているのではないでしょうか。
AIは「自信たっぷりに間違える」ことがある
生成AIを使っていて注意したいことの一つが、もっともらしい回答をすることです。
文章として読むと、とても自然です。
専門的な言葉も使いますし、説明にも説得力があります。
そのため、
「ここまできちんと書いてあるのだから正しいだろう」
と思ってしまうことがあります。
ところが、AIの回答には誤った情報が含まれる場合があります。
存在しない事例や資料を、あたかも実在するように示すこともあります。
これは一般に「ハルシネーション」と呼ばれる現象です。
特に法律、契約、行政手続などでは、ちょっとした間違いが実際の判断に影響する可能性があります。
だからこそ、行政書士としてAIを利用するときには、
「AIがそう言っている」ことと「事実である」ことを分けて考える
必要があると感じています。
「AIに聞いたから大丈夫」は危険?
たとえばAIに、
「この契約書には問題がありますか?」
と質問したとしましょう。
AIは数秒で契約書を分析し、注意すべき条項を挙げてくれるかもしれません。
これはとても便利です。
しかし、その回答だけで最終判断をするのは慎重になったほうがよいでしょう。
なぜなら、契約書は文章だけを読めばすべてがわかるとは限らないからです。
契約が結ばれた背景、当事者同士の関係、実際の取引内容、業界の慣行などによっても、確認すべきポイントは変わります。
さらに、法律や制度が改正されている可能性もあります。
AIは「考える材料」を提供してくれます。
しかし、最終的に判断するのは人間です。
私は、この役割分担がAI時代にはとても大切だと思っています。
AIへの批判力を養成する5つの質問
では、AIを使うとき、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。
難しく考える必要はありません。
AIから重要な回答を受け取ったときには、次の5つを自分に問いかけてみてください。
1.その情報の根拠は何ですか?
まず確認したいのは「根拠」です。
法律の話なら、法律の条文なのか、行政機関の資料なのか、裁判例なのか。
AIに、
「その回答の根拠を示してください」
と聞いてみるのも一つの方法です。
ただし、AIが示した根拠そのものが正しいとは限りません。
できれば元の資料まで確認しましょう。
2.情報は最新ですか?
法律や行政制度、補助金、許認可などは変更されることがあります。
数年前には正しかった情報が、現在も正しいとは限りません。
そのため、
「いつの情報なのか?」
という視点を持つことが大切です。
行政機関などの公式サイトで最新情報を確認する習慣をつけると安心です。
3.反対の立場から考えるとどうなりますか?
AIには、こんな質問をしてみるのもおすすめです。
「この意見に反対する立場から説明してください」
すると、自分では思いつかなかった論点が見えてくることがあります。
一つの答えだけを見るのではなく、別の角度から検討する。
これも立派な「批判力」です。
4.事実と意見が混ざっていませんか?
AIの文章を読むときには、
「これは確認できる事実なのか?」
「それともAIによる解釈なのか?」
を分けて考えてみましょう。
人間が書いた文章についても同じことが言えます。
事実と意見を区別する習慣は、AI時代の情報リテラシーとして、とても役に立つと思います。
5.最後に自分はどう考えるのか?
私はこれが一番重要だと思っています。
AIの答えを読んだあとに、
「では、自分はどう考えるのか?」
と問いかけてみることです。
AIの回答をコピーして終わりにするのではなく、それを材料にして自分で考える。
AIは「答えを出してくれる機械」としてだけでなく、自分の考えを深めるための対話相手として使うこともできます。
行政書士の仕事とAIは相性が悪い?むしろ逆です
「AIが発達すると、行政書士のような専門職はいらなくなるのでは?」
そんな話を耳にすることがあります。
私は、必ずしもそうではないと考えています。
むしろAIが普及するほど、
「情報を確認する人」
「状況を整理する人」
「相談者の話を聞く人」
の役割が重要になるのではないでしょうか。
たとえば契約書についてAIに質問すれば、一般的な注意点を教えてもらえるでしょう。
しかし、
「なぜこの契約を結ぶのか」
「本当に心配していることは何なのか」
「相手との関係を今後どうしたいのか」
といったことは、相談者の話を丁寧に聞かなければわかりません。
法律の知識とAIを組み合わせながら、最後は人の話をきちんと聞く。
これは、これからの行政書士に求められる一つの姿ではないかと私は考えています。
AIを「疑う」のではなく「上手につきあう」
AIへの批判力というと、
「AIを信用してはいけない」
という話に聞こえるかもしれません。
そうではありません。
AIを怖がる必要も、否定する必要もありません。
便利なところは積極的に使う。
ただし、大切なことについては確認する。
そして最後は自分で判断する。
このバランスが重要です。
私はこれを、
AIを使う → 疑問を持つ → 確認する → 自分で考える
という習慣にするとよいと思っています。
AI時代だからこそ「人間が考える」
生成AIは、これからますます便利になっていくでしょう。
だからこそ私たち人間には、「AIに何を聞くか」だけでなく、
「AIの答えをどう受け止めるか」
という力が必要になります。
AIが答えを出してくれる時代だから、人間は考えなくてもよい。
私はむしろ逆だと思います。
AIがたくさんの答えを出してくれる時代だからこそ、
「これは本当かな?」
「根拠は何かな?」
「違う考え方はないかな?」
と問いかけることが大切になります。
生成AIを便利な道具として使いながら、自分自身の考える力も鍛えていく。
それが、これからのAIとの上手なつきあい方ではないでしょうか。
AIに答えてもらうだけでなく、AIと一緒に考える。
そんな使い方を、私も皆さんと一緒に探していきたいと思います。
